読書ノート

侠骨記

侠骨記は、宮城谷昌光の短編小説。春秋戦国時代の歴史小説である。紹介されているのは、魯の曹カイ、帝舜、周王朝建国の召公、秦の宰相百里奚の4人。

キングダムでお馴染みで、個人的に好きな秦の宰相百里奚を紹介する。

百里奚(五羖大夫)

百里奚は管仲と鮑叔と同じ時代に許に生まれた人。許が戦争で滅ぼされ、その時、栄えていた斉に生き、就職活動を開始する。斉の桓公と話す機会があって気に入られることには成功したけど、オラオラ系だった百里奚を採用するのは良くない、って管仲が桓公に助言して不採用となった。そんな感じで人生が上手くいかなずに50代まで過ごした。その後、虞の大夫となることはできたが、虞が晋に滅ぼされて、下僕となる。

晋の君主の娘が秦に嫁ぐことになり、その娘の下僕として秦に入った。その時に、秦の君主の臣下の人と政治について話し合い、「こいつ奴隷のなのに優秀だな」ってことで王室で働くことを誘われる。ただ、百里奚はすでに70代になっていて、50才くらいまで人生上手くいかず、やっと働けた虞は滅んだせいで百里奚は自暴自棄になっていた。なので、臣下の誘いを断り、楚の国に走って逃げる。

臣下は「あの奴隷は優秀だから探してくれ」ってお願いしたけど、秦の君主は聞いてくれなかった。そこで臣下は首の骨が砕けるくらい頭を勢いよく地面に叩きつけお願いした。その臣下は死んだけど、命をかけたお願いなので秦の君主は百里奚を探すように命令を出す。その結果、楚の国で百里奚は見つかった。秦の君主は「百里奚を手に入れるためならいくらでも出すから連れてこい」って命令したけど、「そんな大金で購入しようとしたら楚の役人の耳に入って、かえって手に入らなくなるかもしれない」と言われて、羊の皮5枚で買うことになる。これが五羖大夫と呼ばれる由縁となる。

五羖大夫は70才くらいで採用されたし、元々奴隷ってこともあり、秦の役人たちからは嫌わていたけど、とにかく人徳がすごかったので徐々に認められていった。その後順調に出世して90才くらいで秦の宰相となった。

その後は「とにかく人徳がすごい」ってことで山の民たちと同盟を結ぶことに成功した。始皇帝が統一できるくらい大国となったのは、百里奚が秦より西側の蛮族と同盟を結んだおかげで東側に戦力を派遣できるようになったのが大きい。

キングダムでは穆公のおかげで山民族が味方してくれるとなっているけど、百里奚の人徳が凄すぎて味方になってくれたっていうのが本当の理由である。そんな百里奚の政治の原理は「徳」である。徳とは、分かりにくいが敢えて言うと、「許す」と同義語になる。

百里奚の前半生は不運つづきであったが、いったん幸運をつかむと、こんどは幸運ばかり続いた。長生きはしてみるものである。

宮城谷昌光の作品は長編小説が多いが、侠骨記は短編小説なのでサクッと読めて良い。百里奚以外の他の4人の話も面白いので是非。

 

 

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