将棋

【相掛かり】第48期棋王戦予選 青野照市九段―長谷部浩平四段(2021/5/10)

棋王戦予選で青野照市と長谷部浩平の一戦があったが、ここで先手番の青野九段が7八銀型ひねり飛車を採用した。3/29の及川戦では見事に勝利したが、個人的に流行ると思っている7八銀型ひねり飛車が今回はどうなるか振り返る。

初手からの指し手

☗2六歩 ☖8四歩 ☗2五歩 ☖8五歩 ☗9六歩 ☖3二金 ☗2四歩 ☖同歩 ☗同飛 ☖2三歩 ☗2六歩 ☖7二銀 ☗7八銀 ☖4二銀 ☗7六歩 ☖8六歩 ☗同歩 ☖同飛 ☗9七角 ☖8二飛 ☗7七桂 ☖3四歩 (第1図)

第1図:☖3四歩まで

青野九段と長谷部四段は自然に指し進めて第1図に至る。もし、☖4二銀に代えて☖3四歩として☗7六歩を防ぎにきた場合は、☗3六飛(参考図1)と縦歩取りを狙う。これはひねり飛車の定跡だ。

参考図1:☗3六飛まで

第1図からの指し手

☗8五歩 ☖4一玉 ☗7五歩 ☖3一玉 ☗4八玉 ☖1四歩 ☗3八銀 ☖3三角 ☗7六飛 ☖6四歩 ☗6六歩 ☖6三銀 ☗6七銀 ☖2二玉 ☗5八金 ☖5二金 ☗5六銀 ☖4四歩 ☗3九玉 ☖4三銀 ☗4六歩 ☖4二角 (第2図)

第2図:☖4二角まで

第1図から互いに駒組みを進めて第2図に至る。先手は石田流本組にしつつ、美濃囲いに組んでいる。後手もツノ銀雁木に組めている。互いに不満のない局面だ。

第2図の後手の角が使いづらいので☖5四歩と突きたい。そこで理想の陣形になっている先手の青野九段はこの局面から仕掛る。

第2図からの指し手

☗6五歩 ☖同歩 ☗4五歩 ☖同歩 ☗6五銀 ☖3三角 ☗7四歩 (第3図)

第3図:☗7四歩まで

第2図から先手は☗6五歩〜☗4五歩と仕掛ける。4筋の歩を突き捨てることで、将来☗4四歩と後手陣を乱す手を見ている。

6筋・4筋を突き捨ててから☗6五銀と出る。対する後手は☖3三角とする。これは、先手の飛車が横に動くと☖7七角成とできるし、7七の桂馬が動くと☖9九角成と馬を作れる。反撃を見た手だ。

ここで先手は☗7四歩(第3図)と仕掛けたが、この手が緩手で少し後手に形成が傾いた。☗7四歩に代えて、☗6四歩☖5四銀☗7四歩(参考図2)と仕掛けるのが良かったが。

参考図2で☖6五銀は☗同桂として、☖9九角成と先に香車を取られて馬を作られるが、7筋突破が約束されている。また、☖7四同歩なら☗同銀と進めて、☗7三銀成の7筋突破や☗6三歩成から銀を捌いて良い。

参考図2:☗7四歩まで

第3図からの指し手

☖7四同歩 ☗6四歩 ☖5四銀 ☗7四銀 ☖6二歩 ☗7三銀成 (第4図)

第4図:☗7三銀成まで

☗7四歩に対して本譜は☖同歩と応じた。しかし、自然に見えてこの手は少し緩い。

代えて、☖7四同銀☗同銀☖同歩☗同飛☖7三歩☗7六飛☖8七銀(参考図3)と羽生ゾーンに銀を打ち込んで後手優勢だった。参考図3で飛車が横に逃げれば☖7七角成だし、縦に逃げれば☖9六銀成で後手優勢。

参考図3:☖8七銀まで

ところが、長谷部四段は☖7四同歩と応じてしまった。以下、☖6二歩までは自然な進行だが、最期の☗7三銀成が良くなかった。

ここでは、☗7二歩(☗7一歩成の狙い)☖同飛☗8四歩(参考図4)と狙うか、☗6五銀(☖同銀なら☗7一飛成で試合終了)☖7三歩☗5四銀☖同歩☗4一銀(参考図5)を狙って形成互角だった。

参考図4:☗8四歩まで

参考図5:☗4一銀まで

第4図からの指し手

☖7三同桂 ☗同飛 ☖8一飛 ☗7二歩 ☖4一飛 ☗7一歩成 ☖7六歩 ☗同龍 ☖6六銀 ☗7三龍 ☖7六歩 ☗7二と ☖7七歩成 (第5図)

第5図:☖7七歩成まで

青野九段が☗7三銀成と指したため、多少他の変化の余地はあったが、第5図まで互いに自然に指して第5図に至る。

第5図は後手優勢(何なら勝勢)。先手は龍とと金があるものの角を使える目途がないにのに対し、後手玉は金銀4枚+飛車角に守られている。先手陣は美濃囲いに囲えているが、次の☖6七とが厳しい。

第5図からの指し手

☗6二と ☖6七と ☗5九金 ☖4六歩 ☗2八玉 ☖5七銀成 ☗6三歩成 ☖4七歩成 (第6図)

第6図:☖4七歩成まで

第5図から☗6二と☖6七とと攻め合う。同銀や同金と応じると相手の攻めを早めてしまうだけなので、こういう時は相手にしないのが良い。そのため互いにと金を作ったり成銀を作ったりして第6図に至る。第6図まで来ると後手勝勢。駒の損得はないが、と金の攻めの速度がぜんぜん違う。

第6図からの指し手

☗5二と ☖3八と ☗同金 ☖4六桂 ☗4一と ☖3八桂成 ☗同玉 ☖4六歩 ☗3一と ☖4七歩成 ☗2八玉 ☖9九角成 ☗2一と ☖同玉 ☗6一龍 ☖4一歩 ☗同龍 ☖3一金 ☗9一龍 ☖2四香 ☗2五歩 ☖同香 ☗2六歩 ☖同香 ☗2七歩 ☖3九銀 ☗同玉 ☖2七香成 (まで107手で長谷部浩平四段の勝ち)

107手で長谷部浩平四段の勝ち

第6図で後手勝勢になってから長谷部四段は間違えることなく寄せきった。

☖3八成香までの詰めろ。☗4九金には☖3八歩がある。☗2八飛が最強の頑張りだが、☖4八と☗同金☖同成銀☗同玉☖6六馬(参考図6)で一手一手。投了もやむを得ないだろう。

参考図6:☖6六馬まで

本局は相掛かり戦で先手の青野九段が、僕が大注目している7八銀型ひねり飛車を採用した。結果は負けてしまったが、第3図からの仕掛けで☗7三銀成に代えて、☗7二歩や☗6五銀とすれば良い勝負だっただろう。まだまだ研究の余地があると思われる。

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