読書ノート

年収は「住むところ」で決まる

僕はiPhone 12 Pro Maxを使っている。iPhone12ProMaxは数百もの部品で構成されているけど、ネジ的なありきたりの部品の価値は全く無い。そういうネジとかは世界のどこでも製造できるから、その工場で働いている人の給料は低い。スマホ用のメモリとかCPUは価値はあるけど、製造自体はどこでも良いので、やっぱり工場で働いている人の給料は低い。iPhoneの価値は、iPhone自体の発案とデザインが生み出していて、それはアップルがやっている。だからこそ、アップルはどの下請け業者よりも多くの金を得ていて、アップルの社員の給料はとんでもなく高い。

現代では、他の人がまだ作っていない製品やサービスを生み出す産業に多くの金が流れ込んでくる。それは、企業や国の収益にはもちろん重要だが、良質な雇用を生み出す、という非常に大きな効果も生む。

年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学は、経済の新たな成長エンジンであるイノベーション産業が、なぜシリコンバレーの様な限られた地域に集積し、それが人々の暮らしぶりをどのように変えてきたのかを、ミクロとマクロの幅広い視点から分析している。

給料は技能より「どこに住んでいるか」で決まる

山口県でエンジニアとして暮らすと地獄だ。イノベーティブな仕事なんかできないし、5次請けの仕事を任され、もはや何作っているかも分からない。給料も低いから貯金もできない。

頭の悪い人より頭の良い人の方が高い給料を貰えるのは間違いない。しかし、雇用と給料は、成績の良し悪しより、どこに住んでいるかに左右される。僕は社会人1年目は山口県、2年目以降は東京で働いているが、1年目と2年目で頭の善し悪しは正直変わっていない。しかし給料は確実に倍になった。山口県で働いていた会社が残業代もボーナスも退職金も出ない会社だったというものあるけど、定年まで働いても貰えなかった年収を東京5年目で貰っている。山口県より東京都の方が大学卒業者が多いし、経済のあり方も根本的に違う。住民が就くことができる職の種類と全業種の労働者の生産性も違う。

世界中の経済が繁栄した結果、今日で重要なのは、形あるものをつくっているかどうかではない。製品にせよサービスにせよ、革新的で、他に類がなく、簡単には模倣されないものを作っているかどうかが大事。厳しい競争社会で高い給料を貰うのはそれ以外にない。

ある都市でイノベーション産業が起こると、同じ都市で他の部門の雇用も作り出される。科学者やエンジニア、数学者の雇用が増えると、地域のサービス業に対するニーズが高まる。その結果、タクシー運転手や家政婦、大工、ベビーシッター、美容師、医師、弁護士などの雇用も増える。地域レベルのサービス業で働く人たちは、ハイテク企業の社員が暮らす地域に集まり、その人たちの個人的ニーズに応えていく。要するに、都市にとってイノベーション関連の雇用が一つ増えることは、一人の雇用が生まれる以上の意味がある。

これは、海の水位が上がれば、海に浮かんでいるボート全てが上に押し上げられるのに似ている。同じ歳で暮らす人たちの間には、こうのような現象が見られる。その結果として、今日の先進国では、社会階層以上に居住地による格差による格差の方が大きくなっている。

働き手の資質自体にはあまり大きな違いがない。違うのは、その人が働いている地域の経済のあり方、とくにその地域の高技能の働き手の数なのだ。

山口県で働くと地獄だと書いたが、山口県の大学を卒業したことは後悔していない。ドンキもクラブもないからパリピがいないし、やることがない分研究室にこもって、そこらへんの大卒には負けないくらい研究した。ただ、田舎で働くことを選んだのがダメだった。

東京に出てきて思うのが、同年代でも埋められないくらい差がある優秀な人とか、ゲイのカップル、ギリギリの生活をしているおじさん、金も地位も名誉もある豊かな住宅街などの多様な人達が混ざり合い、好景気に沸いている。個人的には、不景気だと言う人もいるけど、山口県に比べると遥かに好景気だと思う。表参道とか青山とかには、こだわりのお店や手作りの品物を揃えた雑貨店とかが並び、高級レストランや文化施設もたくさんある。

山口県と東京都の働き手に資質自体には大きな違いはないけど、なにより地域の経済のあり方と、高技能の働き手の数が違う。これは、東京にイノベーション産業が集中しているからだと思う。

都市間の格差があまりに大きく、学歴による格差を飲み込んでいるのである。ここから浮き彫りになるのは、資金格差が社会階層よりも地理的要因によって決まっているということだ。

こういう言い方をすると誰かに怒られそうだが、先生の言うことも聞かずサボってばかりで、頭の悪い高卒が、東京で働いているっていうだけで山口県で働いていた頃の僕の給料が高いことに衝撃を受けた。

東京は教育レベルの高い人が多く、地域経済のあり方が山口県と根本的に違う。住民が就くことのできる仕事の種類も多いし、労働者全体の生産性も違う。その結果、高学歴の働き手だけでなく、学歴の低い人の給料も高くなっている。学歴や技能の低い人ほど、給料の高い人が多い都市で暮らすことによる恩恵が大きいと思う。

大学進学はきわめてハイリターンの投資

大卒の方が早く出世できるし、給料もかなり高くなる。大学に進学は他のあらゆる投資と同じだ。「大学進学=投資」という考え方をすると、大学進学の事前に支払うコストは非常に大きい。しかし、大学進学による経済的な恩恵はこのコストを余裕で上回る。大卒と高卒の給料の差は年々拡大していくし、最終的には生涯所得には1億円以上の差が出ると言われている。

また、経済的な恩恵だけでなく、結婚などの人生の様々な面にも好影響が及ぶ。

さらに、本人だけでなく、子どもたちにも恩恵をもたらす。高卒と比べて給料が高いため、子供に充実した学校教育を受けさせることができるし、金があるから健康状態も良い。そんな子供は健康的な人生を送り、大人になってから高い所得を得る確立が高い。

同じ会社に、頭は悪いし性格もクソだけど、親が金持ちというだけで良い教育を受け、海外留学も好きに行けて、その結果英語ができるっていうだけで大した努力もぜずに良い職にありついて高い給料をもらっている人がけっこういる。親が都会で給料が高いというだけで幸せな人生を送っている。本当に羨ましい限りだ。

山口県にどんなに思い入れがあっても、山口県を東京のような都市に意図的にするこは不可能だ。何をもって幸せと定義するかもあるが、自分も子供も幸せに暮らすためには、大学(院)に行って、東京で良い職に就いて高い給料を貰うのが良い。

シリコンバレーが栄えていたり、山口県より東京都の方が栄えているのは、ハイテク関連の仕事をする人たが密集しているため、緊密に連携しやすいからだ(山口県では同年代すらいなかった)。ハイテク産業で雇用が一つ増えることは、一つの雇用が増える以上の意味がある。地域全体のあり方を左右する力を持っている。

コロナもあってオンライン会議が当たり前の世の中になった。しかし、未だに僕ら思いつくアイデアの多くは、日常的な場面での直接の社交関係により予想外の刺激を受けることで生まれている。SNSがいくら発展・普及しても、僕たちの重要な人的交流の大半は、相手と実際に顔を合わせる形で実現している。さらに僕らが得る重要な知識の大半は、Googleではなく、知人を通して得たものだったりする。世界のどこにいてもネットを使えば何でもできるが、結局のところ大事なのは人間だと思う。

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