読書ノート

武器としての会計思考力

ある会社の実態を調べる時、ネットや新聞、雑誌などで調べたり、実際に製品やサービスを体験したり、その会社の社員にインタビューしたりと様々な調べ方がある。しかし、これらの調べ方の多くは数字の裏付けがない定性的な情報である。こういう時に重要なのは、決算書などの会社の数字も使って定量的に情報も調べることである。定量的な情報と定性的な情報を結びつけることで、会社の本当の姿を多面的に浮かび上がらせることができる。会計の数字を使うことで、1)企業・組織が目指すべき姿を提示し、2)戦略の実行状況をモニタリングし、3)戦略を実行した成果を評価できる。

武器としての会計思考力 会社の数字をどのように戦略に活用するか?を読むことで、ビジネスの現場で武器になる「会計思考力」を使って、「経営の現実を読み解く力+経営の現実を変える力」を身に着け、MBAレベルの会計を使いこなせるようになる。

B/Sの読み方

会社が事業活動を行うためには資金調達が必要で、そうした資金を銀行や株主から集める。こうして集めた資金を、事業に必要な資産に投資し、そこからリターンを得て、そのリターンの一部を資金提供者である銀行や株主に対して利息や配当金という形で支払う。また、事業から得たリターンを、銀行などから受けた借金の返済や利息、配当金のような支払いに回さずに、再度事業投資に回すこともある。会社は、このような形で常にお金が流れ続けている。

B/Sは、資金調達と事業投資に関わる部分を示している。会社の決算期時点で、どのような方法で資金調達し、その集めた資金をどう投資しているかを表している。そのため、B/Sには、その会社の戦略や経営方針がよく表れている。会社の安全性や倒産の危険性を知りたい時に読むのが良い。

B/Sの左側には、調達した資金をどう投資したかが書かれている。

B/Sの右側には、どのように資金調達したかが書かれている。負債は、銀行などから借り入れて調達した資金などの明細になっている。純資産は資産と負債の差額である。

会社は、集めてきた資金を投資に回しているので、B/Sの左右の金額は必ず一致する。

純資産の中で重要なのは利益余剰金。これは会社が上げてきた利益の中で、株主に対して配当せず、事業に再投資した内部留保である。利益余剰金には内部留保に回した金額が累積しているので、利益余剰金を見ることで、その会社が大きな利益を上げてきたかどうかを測ることができる。

資産は、流動資産と固定資産に分けられる。

流動資産は、短い期間(1年以内)のうちに現金化される資産である。具体的には、現金や受取手形、売掛金、1年以内に売却する有価証券、在庫(棚卸資産)が流動資産になる。

固定資産は、流動資産以外となる。固定資産は、更に有形固定資産と無形固定資産、投資その他の資産に分類される。有形固定資産の代表例としては、長期に渡って事業で使用される建物や機械設備、土地などがある。無形固定資産は、ソフトウェアなどの形のない固定資産である。

無形固定資産を見る時に着目するのは、「のれん」。のれんは会社がM&Aをしたときの買収価格と買収対象会社の時価ベースの純資産の差額になる。M&Aをしたときの買収価格は時価ベースの純資産を上回ることが多いため、買収した側の会社のB/Sの左側にはのれんが計上される。多額ののれんが計上されている場合には、過去に大きなM&Aを行った可能性が高いことを頭に入れておくと良い。

P/Lの読み方

P/L(損益計算書)の目的は、1年間の取引(フロー)は、を記録し、会社が上げた利益を計算することにある。P/Lでは取引によって生じた収益(売上高)と費用を表示し、その差額として利益を計算する。

P/Lの一番上にあるのが売上高。商品や製品、サービスを販売したことによる売上っがここに表示される。こうした収益はP/Lの一番上に表示されるので、「トップライン」と呼ばれる。

次に現れるのが売上原価。商品や原材料などの仕入れや、工場での製品製造にかかる人件費や減価償却費などの費用が表示されている。売上高から売上原価を差し引いたのが「売上総利益」となる。

その下になるのが販売費及び一般管理費(販管費)。販管費は、会社が本業を行ううえで必要な、売上原価以外の費用である。本社や使者、営業所などでかかる人件費や賃借料、研究開発費、減価償却費、広告宣伝費などが販管費に含まれる。売上総利益から販管費を引いたものが「営業利益」となる。これが、会社が「本業で稼いだ利益」となる。ちなみに、販管費は、その会社のビジネスの特徴をよく表していることが多いので、その内訳を見ておくことが重要である。

その下には、営業外収益と営業外費用が並ぶ。ここの「営業」というのは、いわゆる販売に関わる営業活動ではなく、「会社の本業」という意味。したがって、「営業外」とは、会社の本業以外に関するものを指す。この営業外収益と営業外費用には、毎年行われる経常的な活動を伴うものが計上される。具体的には、貸付金などから発生する受取利息や、株式の保有に伴う受取配当金が該当する。営業利益に営業利益収益を対して、営業外費用を引いたものが、「経常利益」として表示される。

経常利益の下には、特別利益と特別損失がある。これは、その年限りの臨時の利益や損失である。例えば、東日本大震災で生じた損失は特別損失になるし、保有する株式を売却したことにより生じた一時的な利益は、特別利益となる。

経常利益に特別利益と特別損失を足し引きしたものが、「税金等調整前当期純利益」となり、ここから税金と「少数株主利益」を調整したものが、「当期純利益」となる。当期純利益は、P/Lの一番下に位置しているので、「ボトムライン」と呼ばれる。

現場で働くビジネスマンの間では、会計に対する苦手意識が根強い。マーケティングや経営戦略、組織マネジメントなどに強い関心を示す一方で、会計やファイナンスといった分野を敬遠する人は多い。

しかし、日本企業がさらなる飛躍を遂げるためには、現場に対しても会計の考え方を浸透させ、共通言語としての会計を活用している姿勢が必要不可欠である。会計の専門家としての知識ではなく、会計の数字と実際のビジネスとを突き合わせながら、経営の現実に対して格闘する能力である。

武器としての会計思考力 会社の数字をどのように戦略に活用するか?は、著者が経営コンサルティング会社に勤務していてた期間、そして大学・ビジネススクールの教員に転じてからの経験を踏まえて執筆しており、「会計思考力」の養成に役立つ一冊となっている。

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