読書ノート

予測不能の時代―データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ

世界は予測不能に変化している。人・金・物がグローバルかつネットワーク状に相互依存を強める現代では変化はますます加速する。一国で生じた変化は、相互依存の網を通して、世界を揺さぶる。我々は「予測不能の時代」にいる。予測できない未来に備え、今日何をすべきかこそが、ビジネスであり、人生である。

予測不能の時代:データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せは、頭を切り替えて「未来は予測不能」であることを前提に、あらゆることを考え直そう、というものだ。「予測不能にいかに向かい合うか」に対し、大量のデータと解析結果が大いに威力を発揮する。

「ルール」という罠

状況への柔軟な適応を阻むのが、ルールである。ルールは、通常、過去に起きた問題が再び生じることを避けるために制定されている。ルールを決めて守ることは、その意味で、過去に起きた悲劇や不都合を避けるためなので、通常はよいことと思われている。まったくの無法地帯に比べたらルールで統治されている状態は、たしかによりより状態といえる。

ルールに従うことは、多くの場合、その変化する状況に適応せず、変化を無視することを強いる結果になってしまう。ルールとは、元をたどればただの言葉である。ただの言葉に力を持たせるために存在しているのが、体制であり、体制に与えられる権力である。ルールをちゃんと守る、というのは、一面良いことのようだが、予測不能な変化や複雑な多様性に向き合うときには、むしろマイナス面が目立つようになる。

上位目的へのこだわり

変化が起きたときにうまくいかなくなるのは、変化する前の状況に適合していた「手段」にこだわっている場合だ

状況の変化が起きれば「最適な手段」も必然的に変わる。逆に変化を前にしても影響を受けないのは、簡単には変わらない「目的」の達成にコミットしており、手段については柔軟性を持っている場合である。コミットしているのは「目的」だから、状況に応じて「手段」は変わっても構わない。そう言い切れれば、感染症が拡がろうと、AI時代が来ようと来まいと、関係ない。

幸せとは何か

「幸せ」という言葉を聞いても、読者がそれぞれに思い浮かべるイメージは異なると思われる。幸せに関する話をすると、たびたび聞かれる質問が、「『幸せ』や『幸福』というのは、人により受け止め方も意味も異なるので、そもそも単一の指標を測れず、定義可能な対象にもならないのではないか」という疑問だ。一言でいうと「幸せは人それぞれ」という意見である。さらに、文化や時代や宗教的な背景が変われば、幸せの意味や捉え方が異なるので、「幸せ」を一律な概念や尺度で論じことはできないのではないか、という疑問を持つ人がいるのは当然と思われる。

幸せな組織の普遍的な4つの特徴「FINE」

下記の4つの特徴で幸せな組織とそうでない組織の違いがわかる。

  1. フラット(Flat)=均等: 人と人のつながりが特定の人に偏らず均等である。
  2. インプロバイズド(Improvised)=即興的: 5〜10分の短い会話が高頻度で行われている
  3. ノンバーバル(Non-verbal)=非言語的: 会話中に身体が同調してよく動く
  4. イコール(Equal)=平等: 発言権が平等である

逆に言うと、幸せでない集団は、つながりに偏りがあり(特定の人に集中)、5分間の短い会話が少なく、会話中に体が動かず、発言権に偏りがある。

大事なのは、つながりの総量が多い組織でも、少ない組織でも、どちらでも幸せになりうる、ということである。しかし、つながりの送料が多い組織でも、送料が少ない組織でも、つながりが人によって偏っているかどうかが組織の幸せに決定的な影響を与える。

人と人との会話においては、大は小を兼ねない

仕事では、誰かに質問したいことや確認したいことや伝えたほうが良さそうなことなどが、時々刻々生じる。それは計画できない形でやってくる。この5〜10分の短い会話は、このような予測不能な展開に、行動を起こしていることを表している。それは状況依存で即興的すなわちインプロバイズド(Improvised)である。

ここで大事なのは、1時間の定例会議は、5分の会話の代わりにはならないということだ。

コミュニケーションの約9割は非言語、つまりノンバーバル(Non-verbal)の要因によるものなのである。非言語の要因とは、声のトーンやリズムであり、身振りや同調などの身体運動であり、目や顔の向きであり、発言権の受け渡しのタイミングである。そして、コミュニケーションの受け手は、この日言語表現へ無意識に注意を向けており、非言語表現こそが、受け手へ強い影響を与えるのである。

組織の幸せは、メンバーが周囲を元気に明るくしているかで決まる

幸福度の低い組織とは、メンバーの幸福度がおしなべて低いのではない。むしろ組織内での幸福度のばらつきや格差が大きい組織なのである。すあわち極端に不行な人が多いことによって、幸福度の平均値が下がっている組織なのだ。しかも、その極端にすこうな人が会話している相手は、幸せな人のことが多い。実は、幸せの格差は、一緒に仕事をしている会話の相手との間に生じていることが多いのだ。これは、その会話や人間関係こそが、幸せな人と不行な人を同時に生み、幸せの格差を生んでいると解釈すべきであろう。

つまり、人の幸せを犠牲にして、自分だけ幸せになっている人が相当数いるということである。

格差の本質

自然に配分すれば極端な格差になるのであって、平等にするのは、何か特別なことを行う必要があるのだ。富の分配を平等にする努力をしない限り、極端な格差が生じる。すなわち、「平等には理由があるが、格差には特別な理由はない」のである。「自由」に配分すれば格差が生じるのであり、意識的に平等にすることによって初めて格差が緩和されたり回避できたりする。

社会で仕事をしていると東大や早稲田、慶応などの一流大学卒に、いかに愚かな人が多いかが分かる。一方で、大学など出ていない人の中に、いかに聡明で賢い人が多いかが分かる。

人生を通して色々な人たちと接点を持つことが大事である。小さい頃から進学校の連鎖をたどり、一流大学に入って一流企業に入ったり官僚になったりした人は、そのこと時代が分からなくなっていることが懸念される。付き合う人は、自分と同じようなルートを辿った人が多くなるし、更に、趣味や考え方が合う人とつながりやすいSNSからの情報は、このような情報の分断を助長しているからである。このような情報の分断と格差が、人が世界を見るレンズをいかに歪めているかの実態には恐ろしいものがある。

大事なのは予測不能であっても打つ手がないわけではないことである。

そして、予測不能と戦う道具こそが、個々人の生き方であり、企業のマネジメントであり、データやAIである。本書が明らかにするその方法は、過去の延長線上に未来を位置づけた従来の組織論や、経験則による判断や行動とは、まったく異なるものである。

この鍵となるのは「幸せ」である。変化への適応を求めるときこそ、変わらないものを知ることが一層大事になる。それが「幸せ」である。人が幸せを求めることは仏陀、孔子、ソクラテスの時代から現代に至るまで、何も変わらない。本書では一貫して「予測不能な時代の幸せな生き方、企業、社会とはどのようなものか」を問いている。

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