読書ノート

BRAIN DRIVEN ブレイン ドリブン

脳はまだ解明されていないことが多く、可能性の宝庫である。知れば知るほど魅力的な世界はますます広がっていく。

そんな脳の神経系を、細胞や分子の機構から紐解く学問が「神経科学」であり、学問としては非常に新しく、近年活発に論文数が増えている。

人類が新たに獲得しつつある叡智が、難解な科学論文の中だけに埋もれているのはもったいない。そしてその叡智が単なる事実確認のためだけに使われるのも人類には大きな損失になる。そのため著者である青砥瑞人が、BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とはで神経科学が新たに示してくれる叡智を、哲学や心理学でこれまで育まれてきた叡智と照らし合わせている。また、ビジネスを含めた我々の生活と照らし合わせている。

ストレスとうまく付き合えば気持ちが楽になる

僕らは自分自身のストレスを知る必要がある。普通の人は"ストレス"に対してネガティブな印象しかないと思う。確かに人間の脳は、ストレスによってパフォーマンスが下がることはある。しかし、実はモチベーションを高める上でも重要である。そのため、自分で自分のストレス反応を俯瞰的に捉えることは、自分自身の身を守るため、より高いパフォーマンスを発揮するため、他人とのコミュニケーションを円滑に行うためにも欠かせない。

ストレスには記憶力を高める役割もある。入ってきた情報に対してストレス反応することは、学習し、脳の中に記憶化させる役割もある。その意味では、ストレス反応が起こると記憶定着効率が高まり、学習効果を高める。ぼーっとした状態で勉強しても頭に入らない。一定のプレッシャーやストレスがかかった状態の方が、記憶定着効率が高い。

また、ストレスは「直感力」にも影響する。脳の中で「何かおかしい」「やばいぞ」と感じるのは、感覚的、情動的な報せである。何となく、感覚的に脳が知らせてくれる違和感であり、モヤモヤとしたものがある。しかし、その感覚によって「やめておこう」と思うように、直感を基準として瞬時に判断することが可能になる。

もちろん、ストレス反応は直感力を手助けする一要素に過ぎない。しかし記憶痕跡化され、推測が立てられると、一度は学習していることなので、次にどのように反応をしたらいいかの反応速度も高められる。

成功を祝うのはいいが、もっと大切なのは失敗から学ぶことだ

マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは、「成功を祝うのはいいが、もっと大切なのは失敗から学ぶことだ」と言った。

たしかに成功した瞬間は大事だが、ただ祝うだけではなく、背景にあった失敗やストレスなどのネガティブな面にも同時に目を向ける。単にネガティブな記憶に留めるのではなく、ポジションな記憶と紐付けて成長に昇華させる。その脳の学習が僕らを強くしてくれる。

慢性的なストレスを避ける

慢性的なストレスは避けた方が良い。僕らの脳には非常に良くない。ストレスを感じるとコルチゾールが出るが、コルチゾールが出続けている状態は、脳の海馬に影響を与え、細胞を萎縮させる。

そしてストレスを思い返すと慢性になってしまう。思い返すのは、上司や先生など怒った人に原因があるわけではなく、思い返している人自身に原因がある。自ら内的な刺激によってストレスを生み出しているからである。

どんなストレスを避けるかも大切だが、自分自身で心理的安全性を生むスキルも重要である。心理的安全性を生むスキルとは、ストレスを抱えたときの解消方法を持っておくということである。

ある場所に行く。あるものを食べる。ある人に会う。誰かと話す。どうしたら自分が落ち着くか、どうしたらリラックスできるか、そんな存在や環境を真剣に探し、その大切さを改めて認識するのが大事。そして強く自分の記憶にその存在を留める。強い記憶があれば、心理的危険状態に陥っても、それを頼りに心理的安全状態に引き戻され、思考や行動を正しい方向に導いてくれる。

ストレスが慢性化、過剰化した時点で慌てて対策したり探したりするのではなく、日頃から心理的安全の手助けとなる情報を脳にストックしておくことが重要である。ストレスが過剰になっている状態、慢性化した状態では、自分を癒す存在を新たに探すのに注意を向ける脳の余裕がない。危機やネガティブなことばかりに脳が囚われてしまうからだ。

決めつけがストレスの原因になりやすい

「私はこう考えているけど、こういう考え方もあるのだな」。そのように情報処理をすれば、無意識化ではストレス反応に導くところを、成長へと転嫁できる。

決めつけがストレスの原因になりやすいのは事実なので、うまくコントロールしなければならない。多くの人が陥りやすい罠は、「べき論」である。決めつけの典型例だ。自分の口から「〜すべき」「〜である」という言葉が出ていることに気づいたら、バイアスに侵されているのではないかと疑ってみると良い。

ネガティブな感情をポジティブに書き換える術を身につける

僕らは嫌なことであればあるほど思い返しやすく、その情報を脳に定着させやすくなる。強くこびりついたネガティブな感情記憶は、放っておいても自然とその記憶に注意を向け、記憶を強くする方向に作用する。

しかし、強い記憶であればあるほどそれが難しい。「意識しないと意識する」ことで、かえって注意が注がれるからである。それにより一層不快になり、ますますネガティブな感情が悪化する可能性もある。

ネガティブな出来事の記憶を引き出している時にポジティブな感情の発露を促すことで、ネガティブな出来事の記憶にポジティブな感情記憶の配線が作られ始める。

たくさん笑う

βエンドルフィンというのがある。別名「脳内アヘン」である。これによって痛みが感じにくくなる。βエンドルフィンが合成されやすいのは「笑い」がある場面でもある。個々から笑っている時にはβエンドルフィンが出やすい。笑う門には福来る、と言うが、辛く不要なストレスを吹き飛ばす可能性もある。大げさに聞こえるかもしれないが、笑いはβエンドルフィンを通じて脳、身体、心に想像以上にエネルギーを与えてくれる。

笑いの効果は、βエンドルフィンによるストレス緩和だけではない。声を上げて「はっはっはっ」と笑っている時は、息を吐くことが中心となる。それによって副交感神経が役割を発揮し、僕らを休息モードにしてくれる。

笑いは僕らを強くする。笑いによってストレスと付き合いやすくなる。人生の一部に、笑いを取り入れると良い。

BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とはは、神経科学が新たに示した叡智を、心理学や哲学などのこれまでの叡智と照らし合わせている。また、ビジネスを含めた我々の生活と照らし合わせている。その結果として、人間理解にどのように応用できるのか、実際の生活にどのように応用できるのかを探求する「応用神経科学」としての役割を担っている。

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