読書ノート

ロジカル・シンキング

ビジネス上のコミュニケーションの相手は、顧客や取引先、提携相手、株主、消費者、上司、部下、同僚、関連部門など、様々いる。そうした多様な利害関係者に対して自分や組織の考えを分かりやすく伝えて納得してもらい、自分の思い通りに動いてもらう。これによって物事を先に勧め、より早く確実に成果に結びつけることが、求められる。

このようなニーズに応える有効な手立てが「ロジカル・コミュニケーション」だと、本書の著者の照屋華子・岡田恵子は述べている。要は、論理的なメッセージを伝えることによって、相手を説得して、自分の思うような反応を相手から引き出すことである。

ロジカル・シンキング Best solutionは、体系立った、しかもシンプルで実践的なロジカル・コミュニケーションの技術を紹介している。伝え手のメッセージを、受け手に分かりやすく納得感のあるものにするために、「盛り込むべき要素に過不足はないか」、「提示された情報で本当にこの結論が導かれるか」、「結論とその他の要素をどう構成すればよいのか」、といった観点からアドバイスや具体的な改善案を作っていく。本書では、このような仕事を実践する中で培ってきた「ロジカル・コミュニケーションの技術」を紹介する。

相手に伝えるということ

人に何かを伝えるときには、自分の言いたいことをどうまとめようか、どう話そうか、どう書こうか、などと考える前に、必ず課題(テーマ)と相手に期待する反応を確認しよう

ビジネスにおいて、伝え手の「思いの丈」など、受け手にとってはどうでも良い。相手に伝えるメッセージとは、まず、そのコミュニケーションにおいて答えるべき課題(テーマ)が明快であること、次に、その課題やテーマに対して必要な要素を満たし答えがあること、最後に、そのコミュニケーションの後に相手にどのように反応してもらいたいのか、つまり相手に期待する反応が明らかであること、

上記の3つを満たしているものである。「課題」「答え」「相手に期待する反応」の3点セットが、「メッセージ」である。課題はこれで、それに対する相手の答えはこれで、自分にこれをして欲しいと言っているのだな、ということが自分の頭に明快に残るかどうか。これらをクリアしてはじめてメッセージと言える。

「自分にしか見えない病」や「にわか読唇術症候群」に陥らないためには、常にこのメッセージの定義に戻り、1)課題(テーマ)を確認する、2)相手に期待する反応を確認する、という確認作業をすることだ。

何を言えば「答え」になるのか

下記の質問にイエスと答えられるかどうかが、課題に対する答えの要素があるかないかのチェックポイントである。

  • 課題に対して、伝え手が、どのようなアクションをとるべきだと言っているのか?イエスなのかノーなのか?あるいはどのような意見を持っているのか、がクリアに頭に残るか?
  • その結論に至った根拠に納得感があるのか?
  • 結論がアクションの場合、具体的なやり方が示されているのか?自分がそのアクションについて部下に指示を出す場面を想定した時、指示の中身が具体的にイメージできてるか?

根拠が伝わらないときの落とし穴

「前提条件や判断基準」「言わずもがな」「当り前」と思っているのは伝え手だけ

大事なのは、物事をどのように評価し、その結論に至ったのか、である。投資をする/しない、新市場に参入する/しない、といった判断をどのような基準で考えるのか、この部分が示されなければ、その判断が正しいのか、正しくないのか、受け手は判断することすらできない。

事実に対して、与えられた課題に答えを出す上で、その事実をどう見るのか、という判断の軸こそが、企業にとっての戦略的な視点であり、問題解決の際の要点でもある。これをきちんと示すことが、結論とそこに至る根拠を、相手や組織の中で共有化する上で極めて重要である。

説得力のない「答え」に共通する欠陥

わかりにくいものに共通する最初の欠陥は、聞き手、読み手から見たときに、話に明らかな重複・漏れ・ずれがある、ということだ

話の重複・漏れ・ずれは、理解のスピードを遅らせたり、相手を疑心暗鬼にさせてしまうが、話をきちんと整理し直せば、相手の理解を得ることもできる。しかし、話の飛びは、相手の理解を拒絶させてしまう。

相手に理解してもらうためには、相手の土俵で説明する必要がある、という議論があるが、勝手の分からない人様の土俵で分かりやすい説明ができる人は少ない。むしろ、常識的に考えた時に大きな欠点(重複・漏れ・ずれ)がないと思える自分の土俵を明確に示し、そこに相手を乗せる方がよほど現実的というものではないか。MECEは、相手に自分の土俵を示し、っ自分の土俵に乗せやすくする技術である。

知っておくと便利なMECEのフレームワーク

3C/4C

3Cもしくは4Cとは、事業、あるいはその企業や業界の現状を全体集合としたとき、Cで始まる要素を押さえれば、一応全体を網羅したと考えよう、という約束事である。4Cとは、顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)、そしてチャネル(Channel)だ。市場や顧客の状況を知り、競合の状況、そして自社の状況を押さえると、一応、事業の現状の全体を押さえたことにしよう、業界によっては卸や代理店といったチャネルが事業の鍵を握る業態もあるので、そのような場合はチャネルの状況を押さえておこう、というものである。

4P

ある顧客を設定したとき、その顧客に対してどのような商品をどう販売するのか、というマーケティングについて考える時に活用できるのが4Pである。これを押さえれば、一応、マーケティング上、重要なポイントは外していないことにしよう、という約束事である。4Pとは、ターゲットとする顧客に、どのような特性を持つ商品(Product)を、どのような価格(Price)で、どのようなチャネル(Place)を使って、どのような訴求方法(Promotion)で届けるのか、の4つのPで始まる要素を指す。そして、大事なことは、この4つのPがターゲット顧客と一貫性を持っている、ということだ。

So What? / Why So? とMECEで「論理」を作る

そもそも、なぜ論理構成をするのだろうか?それは、コミュニケーションの相手と自分との間に設定された課題(テーマ)に対する答えを伝え、相手に自分の結論を納得させ、期待通りに反応してもらうためである。このコミュニケーションの狙いを達成するには、「答え」の核になる結論が、「課題(テーマ)の答えの要約」になっていることが大前提である。

結論は自分の言いたいことの要約ではない。結論が、相手との間に設定された課題(テーマ)の答えになっていなければ、いくら結論を頂点にした論理自体が正しく構成されても、相手から見るとその論理は「的外れな答え」になってしまい、何の価値もない。まず、結論が課題(テーマ)の答えになっていることを確認する。

結論、根拠、方法を、漏れも重複もなく、また飛びもなく整理できれば、コミュニケーションの「部品」は揃ったことになる。しかし、これらの「部品」を、コミュニケーションの相手に伝え、結論に対して「なるほど、わかった」と思わせるには、もう一工夫が必要になる。

論理とは、結論と根拠、もしくは結論とその方法という複数の要素が、結論を頂点に、縦方向にはSo What? / Why So? の関係で階層をなし、また横方向にはMECEに関係づけられたものである。

そして、大事なことは、どのような切り口で根拠をまとめて相手に提示すれば、その事業の特徴なり、問題点なりが際立って相手に伝わるのかを考えて、最もふさわしい切り口を選ぶことである。

縦の法則: So What? / Why So?

So What?とは、1つ、もしくは複数の要素(データや情報、あるいは自分の考え)全体から言えることを、課題(テーマ)に照らして抽出することである。そして、これは同時に、So What?したものに対して、「なぜそのようなことが言えるのか?」と自問自答したとき、すなわちWhy So?と聞いた時に、元の複数の要素全体が答えになっている、という関係になる。

結論を相手に伝える時、その相手は、いったいどこまでWhy So?と質問してくるのか、その質問に答えるにはどこまで根拠や方法があれば良いのかを見極める必要がある。相手の「Why So?」の質問に答えられるだけの要素を過不足なく階層化し、それ以上の階層化は、相手にとっては冗長であり、蛇足だと割り切るくらいの思い切りが、相手にとって分かりやすいコミュニケーションをとるために必要となる。

また、相手がどこまで「Why So?」と聞いてくるか分からない場合もある。こうしたときには欲張らず、伝え手としてこのコミュニケーションで、まずはどこまで相手に理解してもらえば良いと考えるのか、という視点で階層化の数を判断すれば良い。

横の法則: MECE

ある1つの事柄や概念を全体集合として考え、それらを重なりなく、しかも漏れのない部分集合に分け、全体をその部分集合の集合体として捉える技術がMECEである。

重要なことは、MECEに整理すること事態に意味があるのではない、ということである。最終的に答えるべき「課題」に対する答えをコミュニケーションの相手に伝えるときに、その相手から見て答えが、重なりも漏れもずれもなく、課題(テーマ)に合った切り口できちんと整理されていることが重要になる。

感度のよい受け手になるために

文書が回ってきたら条件反射のようにとにかく読む、のではなく、その文書の目的と自分に期待される反応をまず把握し、その上で読み始める癖をつける。自分が読み終わった後に何をすることが求められているのかを分かって読むのと読まないのとでは、読み込み方が大きく違う。

文書の目的と自分に期待される反応が分からない文書が回ってきたら、躊躇せずに文書の作成者や作成部門に聞いてみる。「いったい、この文書は何の目的で回ってきたのか」「これを読んで、私は何をすることが求められているのか」と。

ロジカル・シンキング Best solutionで述べられている技術は、ビジネスはもちろん、日々の生活や人生にも大いに役立つと著者は述べている。生きることは多くの場合悩み深いものだし、岐路に立って右か左かと選択を迫られることも多い。そのような時に煮詰まった頭の中をちょっとMECEに整理してみる、あるいは自分の生活や人生で譲れないものは何か、それに照らして目の前のいくつかの選択肢に優先順位をつけるとどうなるか整理してみる。人生をセルフ・エディティングする道具としても役に立つ。

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