読書ノート

完全パンクマニュアル

太陽な音楽が氾濫する現代社会において、耳の肥えた若者たちは次第に「聴く音楽」から「演る音楽」にシフトしている。こうなればパンクミュージックが脚光を浴びることは想像に難くない。簡単なメロディー、シンプルな曲構成で感情を歌い上げる。パンクミュージックは、誰に対しても間口が広く、老若男女を問わず始めることができる。また、機材費など初期投資に必要な金額も少ない。誰もが気軽に楽しめ、死ぬまで続けられる。パンクミュージックは、これからますます人口を増やしていくと予想されている。

ではどうやってパンクミュージックを初めたら良いだろうか?幸いなことに、パンクの正しい知識を学び、実践することは難しくない。なぜなら、「セックス・ピストルズ」という素晴らしい先人が存在しているからである。彼らの残したCDやライブ、逸話、伝説を考証し、それらを現代のパンクバンド活動に昇華すれば良いのです。

完全パンクマニュアル はじめてのセックス・ピストルズ デストロイ・エディションの内容を順次忠実に進めていくだけで、ファッションパンクではない、ちゃんとしたパンクバンドが作れます。

パンクってなに?セックス・ピストルズってだれ?

「パンク」というのは、「シンプルで攻撃的なリズムに、批判的/反体制的な政治思想やメッセージを乗せた音楽」である。歴史的視点から見るならば、高い失業率に見舞われ古臭い慣習に辟易した70年代イギリスの若者たちの怒りが火をつけたムーブメントも言えます。彼らは自分たちの怒りを表現するために、音楽を選びました。その音楽はパンク以前のような堅苦しく小難しいものではありませんでした。彼らの怒りを表す音楽は極めて感情的であり、シンプルかつ原初的なものでした。

要は、パンクバンドとは、1)怒りを音楽に乗せて叫び、2)演奏は技術を必要としないものである。

そしてパンクムーブメントの主役は「セックス・ピストルズ」です。彼らはマルコム・マクラーレンの経営するブティック「セックス」の常連客でした。マルコムはマネージャーとして彼らを焚き付け、セックス・ピストルズが誕生します。ピストルズは、過激な歌詞内容が一大センセーションを巻き起こし、レコード会社から2度の契約破棄の後、最初にして最後のアルバム「勝手にしやがれ(NEVER MIND THE BOLLOCKS)」をリリースします。

その後、ベースのグレン・マトロックがクビになり、代わりに入ったのがジョニー・ロットンの親友にして、後にミスターパンクと呼ばれるシド・ヴィシャスです。シドは全くベースが弾けず、歌もロクに歌えませんでしたが、彼は生活自体がパンク、という本物のパンクロッカーでした。彼はヘロインの過剰摂取により21歳の若さでこの世を去り、伝説となりました。

セックス・ピストルズの活動は3年程度で、アルバムは1枚出したっきりでした。伝説のバンドなのにリリースしたアルバムはたった1枚です。

パンクというものは間違っても音楽の一ジャンルと考えてはダメです。その人の生き方そのものがパンクでなければなりません。この点が多くのファッションパンクの人たちの勘違いしているところです。ファッションパンクはステージ上だけで、音楽上だけでパンクを示そうとしてしまうのです。そうではなく、普段の生活から「誰にも縛られないパンクな生き方」というものがパンクロッカーには求められます。

また、楽器は弾けない方が良い、というのも大切なことです。怒りを表す音楽にテクニックは不要です。むしろ邪魔である、とも言えます。シド・ヴィシャスは、他のメンバーと比べても彼の演奏が圧倒的に拙かった。楽器は弾けないにこしたことはありません。

セックス・ピストルズを聴こう

セックス・ピストルズのCDを手に入れる方法はいくらでもありますが、傷一つない新品CDは、パンクロッカーの聴くべきCDではありません。そもそもCDを新品で購入しようという姿勢自体がブルジョアジーの考え方です。パンクというムーブメントが貧しい労働者階級の怒りの声であったことを考えれば、そのようなブルジョア志向が望ましいものではありません。新品のCDを購入した時点で既にファッションパンクです。

「レンタル店でCDをレンタルする」という選択肢は、せせこましく、プロレタリアートの雰囲気を醸していま。しかし、レンタル店のCDというのは、傷がつくのを常に恐れる小心者のCDです。高い確率で傷一つ付いていないCDを借りるハメになります。傷一つついていないCDはパンクではありません。

パンクロッカーが聴くべきCDとは、裏面に大きな傷跡がくっきりと付いていて、5秒に1回は音飛びするようなものが本物のパンクロッカーのCDです。なので、多くの場合傷一つ付いていないレンタル店のCDはセックス・ピストルズを聴くにはふさわしくないのです。

さて、満足の行くCDを手に入れたからといっても、すにそれを自慢のコンポに挿入して再生ボタンを押してはいけません。ピストルズのCDを聴くためには、まず部屋を散らかすことです。最低、床が見えない程度までゴミで散らかす必要があります。狭苦しく汚らしい部屋にいれば、自分がプロレタリアートであることを嫌でも自覚し、パンクを聴くのにふさやしい荒んだ気持ちに自然となります。

こうしてセックス・ピストルズを聴く環境が整ってもCDを聴いてはいけません。音楽を聴くために大切なステップがあります。それは、CDをテープにダビングすることです。

まず、CDというメディア自体が非常に難破です。何度聴いても音が劣化しないというセコイ考え方が全く小市民的で、とてもパンクとは言えません。真のパンクロッカーが聴くにふさわしいメディアはカセットテープです。聴くごとに音質が劣化していき、いつかは壊れるカセットテープ。この一期一会の感覚はまさに「瞬間を生きる」パンクロッカーならではのものです。とにかく、いまある最高の音質をできる限り高い再現性で再生しようなどというファッションパンクな思考は捨てるべきです。ダビングが終わった後は、CDはすぐさま友達に返却するか、叩き壊してください。

パンクに詳しくない人は、このピストルズの聴き方が全くの不毛な作業のように感じるかもしれません。ですが、これがパンクの歴史に脈々と受け継がれた、正しいパンク音源の視聴方法なのです。伝統であるということは、つまり、これがパンクロッカーにとって最も効率的なパンク音源の聴き方であるということです。

ベースを買おう

まず、弦が6本なのがギター、4本なのがベースです。しかし、弦が4本だからといってベースだと思いホイホイ買ってしまうと、思わぬ失敗をすることがあります。実は、、マンドリンも弦が4本なのです。

しかし、マンドリンは実際には弦が8本あり、2本1セットで1本のように見えるだけなので、よく注意すればベースと見分けることができます。

他にもウクレレには要注意です。ウクレレは本当に弦が4本なので、多くのベーシストが間違ってウクレレを購入してしまいます。高木ブーが持っている物がウクレレです。ベースかウクレレか迷った時は、頭の中の高木ブーに持たせてみて、妙に高木ブーに馴染んでいれば、それはウクレレです。買わないようにしましょう。

また、ベースというものは単なる楽器ではありません。シド・ヴィシャスがベースでお客さんを殴っていたことからも明らかな通り、ベースというのはパンクロッカーにとって、人を殴るための武器でもあります。なので、ベースを購入する際には、そのベースを手にとって、人を殴りやすいものかどうかを判断するのが良いです。自分の体格や体力に応じて、ベースの長さや重さを変えることが重要です。

ボーカルは何を買うの?

買うものはありません。酒でも買って、呑んで寝てればOKです。間違ってもボーカルの教則本などを買わないようにしましょう。それくらいです。ボーカルの教則本は「喉に優しい歌唱法」など、パンクロッカーにとって有害な知識の塊です。あとは、何か勘違いしてハーモニカなど買うことないように気をつけましょう。

ちゃんとお金を稼ごう

パンクロッカーといえでも人間です。生きていくためにはお金が必要となります。パンクロッカーも何とかして生活を成り立たせるだけの最低限のお金を稼がなければなりません。

まず思いつくのはヒモです。これは一昔前まではパンクロッカーの生活手段として魅力的なものとされていました。しかし、ジェンダーに関する積極的な認識により、残念ながら昨今ではこのような風潮は薄れつつあります。

90年代から必ずしも仕事が男性の生きがいであり、唯一の自己実現ではない、という認識が徐々に浸透しつつあります。つまり現代では、専業主夫というあり方も決して一概に否定されるものではないと考えられ始めているのです。ただパンクロッカーとしてヒモという生活手段を選択したつもりが、世間からはジェンダーフリー思想の最先端を行く専業主夫として捉えられてしまう危険性があるのです。そのような誤解を避けるためにも、真に残念ながら、ヒモという選択肢は放棄すべきでしょう。全く、困った世の中になったものです...。

セックス・ピストルズが活動していた時代の多くのイギリスの若者たちは失業保険で暮らしていくしかない状態でした。我々も偉大な先人にならい、失業保険により整形を立てるべきなのです。

そして失業保険を得るためには、正社員になることが最も簡単で確実な方法です。バイトでも場合によっては失業保険を得ることはできますが、雇用保険が任意加入になることも多く、全て自分で手続きすることになると大変面倒です。その点、正社員になればかいさy側がそれらを全てやってくれます。正社員になることが、失業保険を手にする一番の近道です。

また、失業保険は就労時の給与の何割かが支給されるので、できるだけ給与の高い一流企業への就職を心がけるべきです。もちろん、就職の際には自分がパンクロッカーであることは伏せましょう。失業保険を得るための就職だと言えば、「ああ、パンクロッカーだな」と誰もが思います。

なお、「就職なんてしていたらファッションパンクと思われるんじゃないか?」と心配になるかもしれませんが、むしろ就職もせずに、その日暮らしで生計を立てている人こそファッションパンクというべきです。

本書では10章にわたりパンクに対する詳細な記述をしています。大切なことはほとんど書かれています。本書を読むことで、ファッションパンクがいかにダサいか、いかにかっこ悪いか、それを理解できます。

パンクロッカーになるためには、パンク的思考、知識、イメージ、曲の展開、詞の内容、意匠、ステージング、それらにどこまでパンクを実践できるかが大切です。独学では本当に難しく、どれかが欠けてファッションパンクになってしまします。本書は、伝統的なパンクの大切な部分を抽出し、簡潔にまとめている完全なパンクマニュアルになっている。

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